アップル製品がYouTubeのVP9に対応したのはH.264終了の伏線?AV1に移行か
2020年10月頃より、アップル製品で「YouTube」のVP9コーデックの動画が再生できるようになりました(参考: iOS 14、iPadOS 14もYouTube 4Kに対応!VP9をサポート?)。
これによって、iPhone、iPad、iPod touch、Mac、Apple TVなどのアップル製品で、「YouTube」の4K動画を再生できるようになりました。
アップル製品で「YouTube」をVP9で再生するためには、OSを最新の状態にアップデートする必要があります。
とは言っても、アップル製品がVP9コーデックの動画再生に対応したわけではなく、あくまでも「YouTube」のVP9限定で再生できるようです。
ここで気になってくるのが、「なぜ今更アップル製品がYouTubeのVP9に対応したのか」ということです。
1つの仮説として考えられるのは、今後「YouTube」が新しい「AV1」のコーデックを採用するにあたって、従来の「H.264」のサポートを終了するのではないかということです。
そんなわけで今回は、「アップル製品がYouTubeのVP9に対応したのはH.264終了の伏線?」について見ていきましょう。
アップル製品がYouTubeのVP9に対応したのはH.264終了の伏線?
YouTubeの動画コーデックをおさらい
まずは、「YouTube」に採用されている動画コーデックについておさらいしておきましょう。
まず、「YouTube」のサービスが始まった頃から、「フラッシュ(Adobe Flash)」による動画配信が行われていましたが、2015年頃にサポート終了を発表しています(参考: YouTubeがFlashを排除し、HTML5の最後の障害を取り除いた)。
次に、「YouTube」では「H.264」と「VP9」で動画配信が行われていましたが、2017年頃に「H.264」の4Kサポートを終了しています(参考: Apple Safari、YouTubeの4K動画再生非対応に。YouTube、4K VP9エンコードのみに切り替え)。
2021年3月12日現在の「YouTube」では、「H.264」でフルHD 1080pまで、「VP9」で8K 4320pまで対応している状況です。
そして、「YouTube」で新しく採用が始まってるのが、「AV1」という動画コーデックです。
「AV1」は、すでに「YouTube」の8K HDR動画で採用されていて、PC/Macの「Chrome」などのブラウザを使うことで視聴することができます(参考: 「YouTube」のAV1対応を8K HDR動画で確認!Chromeで再生可能)。
それぞれの動画コーデックの圧縮効率を見ると、「H.264」< 「VP9」< 「AV1」の順に圧縮率が高く、画質を劣化させずにビットレート(容量)を下げることができます。
「H.264」はすでに古い規格で動画の容量が大きくなりがちなので、グーグルとしてはそろそろ「YouTube」での「H.264」のサポートを打ち切りたいと考えているかもしれません。
「YouTube」はH.264を終了?
「H.264」は2003年頃に発表された規格で、現在では幅広いデバイスで再生できることがメリットです。
しかしながら、「H.264」は「VP9」と比較すると同じ画質を再現するのに約2倍のビットレートが必要で、「AV1」と比較すると同じ画質では約4倍のビットレートが必要になると言われています。
グーグルとしては、年々増え続ける「YouTube」のトラフィックを減らすために、「H.264」をやめてさっさと「VP9」や「AV1」に移行させたいという考えがあると思います。
また、すでに「YouTube」では「H.264」で4K動画の再生ができなくなっていることからも、「YouTube」で「H.264」がいつサポートを切られてもおかしくない状況であると言えます。
さらに、グーグルは「Android TV 10」に対応する全てのデバイスで「AV1」のデコードに対応するように要求していることからも、早く次世代コーデックに移行したいことがわかります(参考: Google, Netflix & YouTube to require AV1 video decoding support)。
このように、「YouTube」は今後「H.264」のサポートを終了する可能性があります。
アップルは「AV1」を支持
ここで、「なぜアップル製品はYouTubeのVP9再生に対応したのか」という疑問の答えに繋がってきます。
その理由の1つとしては、もちろん「4Kで動画を見るため」というのもあると思います。
しかしながら、やはりそれ以上に「YouTube」が「H.264」のサポートを終了したがっているという理由の方が大きいのではないでしょうか。
もしも「YouTube」が「H.264」のサポートをやめてしまったら、世界中のアップル製品で「YouTube」が見れなくなってしまうので、その前に「VP9」に対応してもらったと考えるとしっくりきます。
また、アップルはかねてから「VP9」の次世代コーデックである「AV1」の対応を支持しています(参考: Appleも加わったオープンソース動画コーデック「AV1」は本当に業界スタンダードの座を奪えるのか?)。
となると、おそらく今後の「iOS 15(仮)」あるいは「iOS 16(仮)」などで「AV1」のコーデックに対応してくる可能性があるので、いずれはアップル製品で「YouTube」の「AV1」の動画を再生することもできるようになるわけです。
このように、アップル製品が「YouTube」の「VP9」に対応したことは、「YouTube」が「H.264」を終了する伏線であって、なおかつ「YouTube」やアップル製品が「AV1」に完全対応するまでの繋ぎであると考えることができます。
▼「Apple TV 4K」はこちら
最後に
今回は、『アップル製品がYouTubeのVP9に対応したのはH.264終了の伏線?AV1に移行か』についてご紹介しました。
このように、iPhone、iPad、iPod touch、Mac、Apple TVなどのアップル製品で「YouTube」の「VP9」が再生できるようになった背景に、「YouTube」が「H.264」の提供を終了するかもしれないという可能性があります。
すでに、「YouTube」の「H.264」の動画では4K、8Kの動画が再生できなくなっていることからも、グーグルはすでに「H.264」に見切りをつけていると思います。
また、「YouTube」では次世代コーデックの「AV1」の対応が順次始まっているため、今後は「VP9」と「AV1」の2つのコーデックで「YouTube」の動画を提供していくことになるかもしれません。
グーグルがここまで「VP9」や「AV1」にこだわってる背景には、MPEGとのライセンス問題を回避したいという理由があると思います。
果たして、「YouTube」における「H.264」の提供は今後どうなっていくのか、「AV1」は普及するのか注目ですね。