AV1コーデックの圧縮率がすごい?H.264もHEVCもVP9も不要に?
動画ファイルを圧縮するためのコーデックといえば、現在はBlu-rayやほとんどのウェブ動画で広く使われているH.264、Ultra HD Blu-rayやAmazon Prime Video、Netflixなどに採用されているHEVC(H.265)、そしてYouTubeに採用されているVP9などがあります。
次世代のビデオコーデックをめぐっては、しばしばMPEG陣営のHEVCとグーグルのVP9が対立していましたが、さらにこれら2つのコーデックをも上回る次世代コーデックとして「AV1 (エーヴィー・ワン)」が注目されています。
AV1の圧縮効率はHEVC、VP9よりも高いとされていて、さらにロイヤリティーフリーで使えるということから、すでにGoogle、Apple、Amazon、Microsoft、Netflix、Hulu、Nvidiaなどの主要企業が支持を表明しています(参考: アップルがオープンな動画規格に参加した3つの理由)。
動画配信サービスのNetflixではすでにAV1を使った実験を行なっていて、SD解像度(480p)の動画であれば4GBで33時間収録できるまでに圧縮効率が高くなっているようです(参考: ネットフリックス本社を動かした、高すぎる「日本のスマホ視聴比率」 —— 4GBで30時間記録する、超高圧縮規格も開発中)。
これはざっくり計算すれば、DVDのおよそ33倍に値します(DVDはMPEG2コーデックで片面1層4GBで約1時間の収録だったため)。
もちろん、DVDと比較するまでも、H.264やHEVC、VP9などと比べても高い圧縮率を誇っているのは間違いありません。
果たして、この次世代コーデックAV1の登場によって、H.264、HEVC、VP9は不要になるのでしょうか。
AV1の登場でH.264、HEVC、VP9は不要になる?
「AV1」の現状を見ると、すでに動画再生ソフトの「VLC Media Player」が、v3.0.4で対応しているようです(参考:「AV1」ストリームのデコードをサポートした「VLC media player」v3.0.4が正式公開)。
また、グーグルのブラウザである「Google Chrome」もバージョン69でベータ対応していて、次のバージョン70ではAV1を正式採用するそうです。
すでに、YouTubeでは、AV1公式チャンネル(参考: Alliance for Open Media)などの動画がAV1にエンコードされているようで、AV1対応のGoogle ChromeやFireFoxなどのブラウザを使うことで視聴できるようです(参考: How to enable AV1 support on YouTube)。
このように、AV1のリリースは遠い未来の話ではなく、2018年10月現在すでに始まっているのです。
追記19.3.14: Android Qのベータ版でもAV1に対応するようです(参考: 次期「Android Q」がベータ提供開始。Pixelで利用可)。
アップルのAV1対応はいつなのか?
こうなってくると、気になるのはアップルの対応です。アップルはすでにAV1に対応することは表明していますが、それがいつになるかは不明です。
もしもアップルの対応が早ければ、2019年のiOS 13やmacOS 10.15でAV1に対応する可能性もあります。
ただ、アップルがHEVCに対応したのは2017年のiOS 11、macOS 10.13からとかなり遅かったので、対応は、まだまだ先になる可能性もあります。このあたりはアップルのみぞ知るところです。
とは言っても、実はアップルは過去にH.264の採用を2005年頃から行うなど、かなり対応が早いケースもありました(参考: アップル、H.264の動画再生に対応した「QuickTime 7」)。
今回もアップルが、AV1をかつてのH.264なみに重要度が高いと考えていれば、2019年の対応もあり得るかもしれませんね。
そしてiPhoneやiPadがAV1に対応すれば、AV1は一気に普及するかもしれません。
※追記: iPhone 15 Proシリーズの「A17 Pro」から「AV1」に対応しました。
最後に
今回は、『AV1コーデックの圧縮率がすごい?H.264もHEVCもVP9も不要に?』についてご紹介しました。
このように、AV1をめぐっては、YouTubeもNetflixも準備オーケーといった具合で、2018年以内には利用可能になるかもしれません。
あとは、アップルなどのハードウェアを手がける主要なメーカーがいつ対応するのかがカギになってきます。
現状では、アップル製品はVP9に対応していないのでYouTubeの4K動画を見ることができません(MacはChromeで対応可)。
特に、Apple TV 4Kは、「4K」と名前が付いているくせにYouTubeの4K動画が再生できないというマヌケな事態になっています。
この現状を一刻も早く打開するためには、アップルが早くAV1に対応するしかないのです。
AV1コーデックの登場によって、アップル製品の問題はもちろん、セルラー回線のギガが減る問題なども解消されることに期待ですね。