世界一のホワイト企業!グーグルが持つ3つの文化とは?

「理想の会社」とはどういうものでしょうか。

それは残業がなく、給料も良く、福利厚生が充実しており、社員の満足度も高い企業のことでしょうか。

そんな「ありえない理想」を全て実現している会社が一社あります。

米Fortune誌の働きたい会社ベスト100(参考: 100 Best Companies to Work for)で数年連続1位になっているのは、誰もが知るあの有名企業「グーグル」です。

確かにグーグルの福利厚生ぶりはよく耳にしますよね。

無料の送迎バスはもちろん、社員食堂も無料だし、社内にジム・プール・ボーリング場・ビーチバレーのコートまであるそうです。

そんな至れり尽くせりっぷりを聞くと、「ここは本当に会社か?」と疑いたくなりますよね。

中には「そんなに遊んでばかりで利益が出せるわけがない」と憤慨する人もいるかもしれません。

周知の通りグーグルの時価総額は常に世界一、二位に留まって(アップルと首位争いして)いて、利益率はかなり高いです。

そしてもちろん不正や粉飾などしていません(租税回避の話はありますが)。正真正銘のクリーンな会社なのです。

では「グーグルはなぜ、ここまでのホワイト企業になれたのか」と疑問に思いますよね。

今回はその鍵を握るグーグルが持つ3つの文化について見ていきましょう。

今問題になっている日本の電通とどこが違うのかにも注目してください。

なぜグーグルは世界一のホワイト企業になれたのか

「なぜグーグルは世界一のホワイト企業になれたのか」を考える上で、今回は、「1. Googleが掲げる10の事実」、「2. 組織より人を重視する」、「3. SIY (サーチ・インサイド・ユアセルフ)」という、3つの文化について見ていこうと思います。

1. Google が掲げる 10 の事実

一つ目の文化はグーグルの社訓である「グーグルが掲げる10の事実」です。まずはその中身を見てみましょう。

  1. ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
  2. 1 つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
  3. 遅いより速いほうがいい。
  4. ウェブ上の民主主義は機能します。
  5. 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
  6. 悪事を働かなくてもお金は稼げる。
  7. 世の中にはまだまだ情報があふれている。
  8. 情報のニーズはすべての国境を越える。
  9. スーツがなくても真剣に仕事はできる。
  10. 「すばらしい」では足りない。

(参考: Google が掲げる 10 の事実)

どれも興味深いものですね。今回は特に「6. 悪事を働かなくてもお金は稼げる。」と「9. スーツがなくても真剣に仕事はできる。」にフォーカスしてみます。

悪事を働かなくてもお金は稼げる。

これは以前は「Don’t Be Evil (邪悪になるな)」と呼ばれていたもので、要約すると「利益を優先して邪悪になってはいけない」ということだそうです。

儲かるからといってユーザーが不利になることをしてはいけない、という極当然のことですが、これを実現するのはかなり難しいですよね。しかしグーグルはシンプルな方法でこれを実現しています。

「邪悪になるな」の最大の意義は、それが従業員への権限委譲の一つの手段になっていることだ。(参考: How Google Works)

つまりもし誰か、もしくは会社が道を踏み外しそうになった時、「邪悪になるな」の一声で悪事を阻止することができるのです。

従業員であれば誰もがヒモを引っ張って、会社という工場を止めることができるとのことです。これにより悪どいサービスは事前に予防されるし、粉飾などの悪事を働いてはいけないと、会社内のモラルも高く設定されるのです。

スーツがなくても真剣に仕事はできる。

これは単に「服装が自由です」と言っているのではありません。グーグルのホームページから引用すると以下の通りです。

Google の共同創設者は、仕事は挑戦に満ちていなければいけない、挑戦は楽しくなければいけないという考えで会社を作りました。適切な企業文化があるほうが、創造性のある優秀な成果が上がりやすくなると Google は考えています。(中略) Google は社員を厚く信頼しています。Google の社員たちはさまざまなバックグラウンドを持ち、エネルギーと情熱をほとばしらせながら、仕事、遊び、人生に独創的にアプローチしています。(参考: Google が掲げる 10 の事実)

要約すると、社員に自由を与え手厚くもてなした方が、結果として会社に利益をもたらしてくれるということです。それは社員を(遊びほうけないと)信頼しているからこそできる技であり、実際にそうやってグーグルは成長してきたのだと思います。

そのため間違っても新入社員に月100時間以上残業させたりはしないでしょう。そんなことをすれば結果的に会社に損害が出るのを分かっているからです。

2. 組織より人を重視する

会社の幹部に「あなたの仕事で一番重要なものは?」と聞けば何と答えるでしょうか。おそらく「会議に出ること」や「事業戦略を立てること」と答えると思います。では同じ質問をスポーツチームのコーチやGMに聞くとどうでしょうか。

一番重要な仕事は「最高のプレーヤーをドラフトで獲得するか、スカウトするか、あるいはトレードで持ってくること」と答えるだろう。 (参考: How Google Works)

これは会社も同じで、会社にとって最も重要なことは、飛びっきり優秀なプレーヤーを獲得することなのです。

経営者の場合、「あなたの仕事のうち一番重要なものは?」という問いへの正解は「採用」だ。(参考: How Google Works)

そしてこれを実現するためにグーグルがとっているのは、「委員会によるピア型採用」というもの。

これは大学が優秀な教授を採用するのと同じように、とにかく優秀な人材を確保することに専念するのです。ほとんどの会社で行われている「ヒエラルキー型採用」では、優秀な人材はまず採用されません。なぜなら自分の立場が危うくなるからです。

もしあなたが面接官でどう見ても自分より優秀な人間が目の前に座っていたら、快く「採用」の判を押せるでしょうか。いや、無理でしょう。だからグーグルは「ヒエラルキー型採用」を廃止しました。「自分より優秀な人材を採用する」ためにです。

またグーグルでは、採用した人が転職して他社で活躍する話はよくあるそうです。実際にグーグルの元従業員で、今はFacebookのCOOをしているシェリル・サンドバーグなどがいます。優秀な人材は会社に利益をもたらし、やがて国や世界に利益をもたらします。間違っても人の命より組織の利益が優先されることはあってはなりません。

3. SIY (サーチ・インサイド・ユアセルフ)

三つ目の文化は通称「SIY (サーチ・インサイド・ユアセルフ)」と呼ばれるものです。

これはグーグル・ユニバーシティと呼ばれる社内授業の一つで、マインドフルネスを通してEQを高め、ストレスをなくし、人間関係を円滑にすることを目的として行われています。

要するに社内からパワハラやセクハラなどあらゆるハラスメントや、それによるストレスをなくそうという挑戦なのかもしれません。そんなことは出来っこないと思うかもしれませんが、グーグルという会社は本気で実現させようとしています。

マインドフルネスを科学的な側面で捉え、客観的にその有用性を証明しているのです。実際にSIYがストレスを減らし、幸福感を増すことは脳をスキャンしたデータによって明らかになっているそうです。「SIY」をつくったタンという男は、「思いやり」が世界を救うと本気で信じています。

奇しくも私たち日本人の祖先がずっとやってきた「禅」はそれを何千年も前から実現していきました。にも関わらず私たちはいつしか「禅」の教えを忘れてしまったようです。きれいごとではなく、上司に「思いやり」があれば部下の自殺を防げたはずなのです。

▼グーグルの秘密が詰まった本、「ハウ・グーグル・ワークス」がオススメです。

最後に

確かにグーグルのやり方をそっくりコピーするのは簡単ではないと思います。従業員に福利厚生を与えるには会社に安定した高い収益が必要になるし、時には残業や長時間労働を強いるのもやむを得ないときがあるかもしれません。

それでも「邪悪にならない」こと、「組織より人を重視する」こと、「SIY(思いやり)を習得する」ことは今すぐにでも出来るでしょう。電通に欠けているのはこの三点ではないでしょうか。

ネット広告で不正を行った(参考: 電通、ネット広告で不適切取引 社内調査公表へ)ことを社員が誰も止められなかったのは、「邪悪にならない」文化が欠けていたから。パワハラを繰り返し、月100時間を超える残業で社員を自殺に追い込んだのは、上司に「思いやり」が足りなかったことと、「組織より人を重視」しなかったから。

グーグルが世界一のホワイト企業になれたのは、単に優れた検索エンジンでシェアを取ったからではなく、これらの優れた企業文化を持っていたからではないでしょうか。

今日本では理想の会社のあり方が求められています。もし理想の会社がどういうものか答えるなら、「グーグルのような会社」と私は答えます。

もはや給料が高く、有名なだけの会社は理想の会社ではありません。「悪事を働かない」、「社員を重要視する」、「思いやりを大事にする」、そこまで揃って初めて一流の会社と言えるのではないでしょうか。

参考:
How Google Works (2014) / エリック・シュミット他
サーチ・インサイド・ユアセルフ (2016) / チャディー・メン・タン