民放BS4Kはダイナミックレンジの切り替え非対応!SDRもHLG HDRに

2018年12月1日より、「BS4K放送」が始りました。

「BS4K放送」では、解像度3840x2160p、HLG(ハイブリッド・ログ・ガンマ) HDR(エイチディーアール)対応、HEVCコーデックといった次世代フォーマットで放送されています。

2019年9月1日には日テレもBS 4K放送に参加し、現在は「NHK BS4K」に加えて、日テレ、テレ朝、TBS、フジテレビ、テレ東の「民放BS4K」の放送も行われています。

私も遅ればせながら実際に「BS4K放送」を導入して使ってみたのですが、すぐにあることに気がつきました

それは、「民放BS4K」は、ダイナミックレンジの切り替えに対応していないということです。

具体的には、「民放BS4K」では、コンテンツがSDRでもお構いなしに全てHLG HDRに強制変換されて放送されているのです(参考: BSテレ東で新4K衛星放送の「4Kマスタールーム」を公開)。

これは「BS4K」の仕様と思えたのですが、「NHK BS4K」ではきちんとSDRとHLG HDRがコンテンツごとに分けて放送されています。

おそらく「民放BS4K」は、コンテンツごとのダイナミックレンジの切り替えが面倒なので、全てHLG HDRに強制変換して放り投げているようです。

民放BS4Kはダイナミックレンジの切り替えに非対応

2019年11月14日時点では、「民放BS4K」ではダイナミックレンジの切り替えに対応していないため、すべての番組がHLG HDRに変換されて放送されています。

実際にBSテレ東4Kでは、

現行のHD放送データ(HD SDR=スタンダードダイナミックレンジ)を、4KのHDR(ハイダイナミックレンジ)方式のひとつである4K HLG(ハイブリッド・ログ・ガンマ)方式にアップコンバートして送出する拠点となる。

BSテレ東で新4K衛星放送の「4Kマスタールーム」を公開

といったように、2K SDRコンテンツを4K HLG HDRにアプコンして放送しているようです。

「NHK BS4K」では、コンテンツごとにダイナミックレンジが切り替えられるため、SDRのコンテンツはSDRで、HDRのコンテンツだけHLG HDRで出力されています。

しかしながら「民放のBS4K放送」では、SDRのコンテンツもHDRのコンテンツもすべてHLG HDRで放送されているのでややこしいのです。

また、民放のBS4K放送を見るとすぐに気づくのですが、放送されている番組の8〜9割がそもそも2K SDRのコンテンツで、4K対応番組は通販などのごく一部しかありません(それもおそらく4K SDR)。

このことから考えられることは、民放はあまり「BS4K放送」には乗り気ではなく、コンテンツごとにダイナミックレンジを切り替えるとなるとコストがかかるのでやりたくないのかもしれません。

SDRコンテンツをHLG HDR出力する問題点

ここで、「SDRのコンテンツをHLG HDRで放送しても別に良いんじゃない?」と疑問に思うところなのですが、これにはある問題点があります。

それは、テレビのHDRモードの設定がHDRコンテンツに最適化されているということです。

HDRコンテンツはダイナミックレンジが広いので、テレビのコントラスト補正を強めにかけると、とても鮮やかでシャープな見た目になります。

実際にほとんどのメーカーのテレビでは、HDRモードでコントラストが強く出るように設定されていると思います。

ここで問題になってくるのが、「民放BS4K」のSDRソースの番組をHDRモードで表示すると、映像のノイズが目立ったり、色がおかしくなったりして、とても見栄えが悪くなることです。

これはテレビ側がHDR信号を認識して、HDRに最適化した映像表示をしているため当然のことです。

もちろん、妥協点としてHDRモードでもSDRコンテンツがましに見えるように画質設定をする方法もありますが、それをやると本物のHDRコンテンツを表示した時に見劣りしてしまうのでもったいないです。

このように、SDRコンテンツをHDRで放送されると、結果的に見た目が悪くなるのでやめて欲しいところです。

今後の対応に期待

予算の都合もあるので、2K SDRの番組をBS 4Kでそのまま流すのは仕方がないと思うのですが、せめてダイナミックレンジの切り替えには対応して欲しいところです。

2K SDRの番組は「4K SDR」で、4K SDRの番組も「4K SDR」で、そして4K HDRの番組のみ「4K HLG HDR」で切り替えて放送するようになれば、テレビ側で最適な映像表示が可能になります。

このようなコンテンツに応じたダイナミックレンジの切り替えというのは、今時は「Fire TV Stick 4K」や「Apple TV 4K」などのストリーミングデバイスでも標準対応しているので、「民放BS4K」にもさっさと対応してもらいたいところです。

もちろん、まだ「BS4K放送」が開始してから1年ほどしか経ってないので、今はまだまだ実験期間だと思います。

おそらく今後HDRの扱いに慣れてきたところで、「民放BS4K」も「NHK BS4K」のようにダイナミックレンジの切り替えに対応するのでしょうか。

原因はCM?

なぜ民放BS4Kはダイナミックレンジの切り替えに対応していないのか」という疑問の答えの1つとして、民放はCMを頻繁に挟むためではないかというのが考えられています。

実際に民放BS4KがHDR変換を行なっている理由として、AV Watchの記事によると、

おそらくはCMを間違いなく確実に送出するためではないだろうか。現在のCMは、すべてSDRで制作されているが、将来はHDR制作のCMが混在する可能性もあるだろう。また民放の4K放送はほとんどがSDR制作だが、HDRで制作された番組も一部にはあり、今後、特にスポーツ中継などではHDR放映が増える可能性がある。 特にCMは時間的に短いため、HDRとSDRの間を短時間に何度も行き来することになる。このため、あらあゆるテレビ受像機で安定した受信、表示ができるよう「HDR(HLG)で固定し、SDRもそこにはめ込む」という選択肢をしたのではないか。

“4Kテレビが暗い”原因と誤解。消費者守る対策を望む

と、言及されています。

確かに、NHKは番組の途中でCMを挟まないので、SDRの番組とHDRの番組でダイナミックレンジを切り替えて放送してしまっても問題がないわけです。

しかしながら、民放は必ず番組途中にCMを挟んでくるため、CMの度にダイナミックレンジをパチパチ切り替えていると鬱陶しいですし、CMがうまく放送されないリスクもあるわけです。

とは言っても、SDRコンテンツのHDR変換によって、テレビによっては「4K放送が暗い」というクレームも出ているようなので、やはり番組に応じてダイナミックレンジは切り替えるのが望ましいです。

ここで妥協案として、「SDRの番組はCMもSDRで流す」、「HDRの番組はCMもHDRに変換して流す」という風に番組単位で区切ってしまうのはどうでしょうか。

この方法であれば、CMに入る度にダイナミックレンジの切り替えが発生しないので、CMの放送に問題が起きる心配もありません。

いずれにしても、すべての番組をHDRで放送するのは問題が多いので、民放BS 4Kもダイナミックレンジの切り替えに対応して欲しいものです。

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最後に

今回は、『民放BS4Kはダイナミックレンジの切り替え非対応!SDRもHDRに』についてご紹介しました。

このように、現状では「民放BS4K」はダイナミックレンジの切り替えに対応していないので、SDRコンテンツもHLG HDRで放送されています。

SDRコンテンツをHDRで放送されると、テレビで最適な映像で表示できないので、「NHK BS4K」のようにダイナミックレンジの切り替えに対応してもらいたいところです。

「BS4K放送」はまだまだ始まったばかりなので、今後の進歩に期待です。