TVerが同時配信(サイマル)に対応してもYouTubeに勝てない3の理由!
2020年1月20日から、「TVer (ティーバー)」がテレビとネットの同時配信(サイマル)のテストを行なっています(参考: TVerで民放5局がネット同時配信の実証実験 放送とほぼ同じ内容をストリーミング)。
今回の実験では、キー局(TBS、日テレ、テレ朝、フジ、テレ東)で放送されている夕方のニュース番組を、テレビ放送と全く同じ内容のものをネットでも同時に見れるようになっています(一部映像差し替えもあり)。
今回の実験からも分かる通り、おそらくTVerは今後テレビとネットの同時配信(サイマル)の実現を目指していくのだと思います。
TVerの同時配信(サイマル)を巡っては、放送作家の鈴木おさむが「TVerのサイマルが始まればネット動画の覇権を握り、YouTubeやNetflixなどに勝てる」といった旨のことを言っていました(参考: 【鈴木おさむ】日本メディアを制するのは「TVer」)。
しかしながら、TVerが同時配信(サイマル)に対応しても、YouTubeやNetflix、Amazon Prime Videoといったネット動画の覇権を奪うことはないと思います。
そんなわけで今回は、「TVerが同時配信(サイマル)に対応してもYouTubeに勝てない理由」について見ていきましょう。
TVerが同時配信(サイマル)に対応しても他のネット動画に勝てない3の理由!
理由1. 同時配信(サイマル)の需要は多くない?
1つ目のTVerが同時配信(サイマル)に対応してもYouTubeに勝てない理由は、「同時配信(サイマル)の需要は多くない?」です。
インターネットの動画では、「オンデマンド」と呼ばれるいつでも動画が見れるものに対して、「リニア」と呼ばれるライブ配信形式のものはあまり人気がありません。
実際に「AbemaTV」や「dTVチャンネル」などのサービスが動画を流しっぱなしにするリニアのサービスを行なっていますが、緊急会見などを除いてはあまり多くは見られていません。
実際に「AbemaTV」は、最近は動画垂れ流しの「リニア」よりも、いつでも好きな動画が見れる「オンデマンド」の方に力を入れていて、特に動画が見放題になる有料会員の「Abemaプレミアム」が伸びているようです(参考: 【速報4】AbemaTVの売上高は1.8倍の111億円に急拡大 WAU拡大背景に課金売上伸長 広告商品の開発が課題 今期から赤字額は徐々に減らす方針)。
このように、ネット動画にはおいてはリニアはあまり人気がなく、見られていません。
なぜネットで「リニア」の動画の人気がないかと言うと、ネットにはニュースや動画、音楽、本、ゲームなどのコンテンツが溢れかえっているので、「わざわざ時間を合わせてまで動画を見るのがかったるい」というのがあると思います。
YouTubeにもライブ配信やプレミア配信といった「リニア」形式の配信方法がありますが、通常のオンデマンドのあくまでおまけといった位置づけで、何百万人も同時に見るものではありません(せいぜい数万人)。
このように、ネット動画ではリニアよりオンデマンドが人気なので、TVerが同時配信(サイマル)に対応したからといってYouTubeには到底勝てないと言えます。
理由2. 人々はテレビ番組ではなくテレビを見ているだけ?
2つ目のTVerが同時配信(サイマル)に対応してもYouTubeに勝てない理由は、「人々はテレビ番組ではなくテレビを見ているだけ?」です。
そもそもなぜテレビを見ている人が多いかという理由は、「それがテレビだから」なのです。
テレビは何も考えずにただリモコンのスイッチをスイッチを押せば見ることができるというシンプルなデバイスなので、「とりあえずテレビをつける」という習慣のある人が多いのです。
そのため、「あの番組を見るためにテレビをつけた」という人よりも、「ただ何となくテレビをつけて見ている」という人の方が圧倒的に多いと思います。
このように、ほとんどの人はテレビ番組を見ているのではなく、テレビを見ているのです。
一方で、YouTubeの動画を見る場合は、スマホをロック解除してわざわざアプリを立ち上げるという手間が発生します。
そして、アプリを立ち上げた後にユーザーを満足させるコンテンツがなければ、アプリはすぐに閉じられて違うアプリに変えられてしまいます。
このように、ネットにはコンテンツが山ほどあるので、コンテンツに魅力がなければアプリすら立ち上げてもらえなくなります。
つまり、YouTubeなどの人気アプリは常に熾烈な競争を勝ち抜いてきているのです。
では、TVerで同時配信が始まればどのくらいの人たちがTVerのアプリを立ち上げて同時配信を見るでしょうか。
ここで、かつてガラケー時代にワンセグというものが付いていて、いつでもテレビを見ることができたことを思い出してみましょう。
あのワンセグのことを思い出してみると、TVerのネット同時配信を見たいと思っている人の数がどの程度なのか分かると思います。
このように、テレビは流れっぱなしなメディアで、何もしなくても見てもらえるのに対して、YouTubeなどのネット動画は選択しないと見てもらえません。
そんな両者が、同じインターネットという土俵で勝負すればどうなるかは、すでに明らかではないでしょうか。
理由3. ネットでウケるのはニッチなコンテンツ?
3つ目のTVerが同時配信(サイマル)に対応してもYouTubeに勝てない理由は、「ネットでウケるのはニッチなコンテンツ?」です。
テレビはマスメディアであるので、視聴率を取るためにより多くの人が興味を示しそうな内容のコンテンツを流します。
一方で、YouTubeはユーザーが興味のあるコンテンツだけを選択して見ることのできるニッチなメディアです。
そのため、例えばゲームが好きな人はマニアックなゲーム動画を、カメラが好きな人はマニアックなカメラ動画を、釣りが好きな人はマニアックな釣り動画を選んで見ることができます。
実際にYouTubeで検索すると、そのようなマニアックな動画がいくつもあって、ニッチながらも人気を集めているものが多くあります。
このように、YouTubeは1人1人見ている動画が異なってくるのです。
一方で、テレビでマニアックなゲーム特集やカメラ特集、釣りを特集をやってゴールデンタイムで流しても、視聴率は取れないのでまず作られることはまずありません(最近は深夜でも厳しい)。
結果として、テレビは誰が見てもある程度ウケる情報番組、大食い番組、田舎に行く番組、お笑い芸人が喋る番組などが中心となっています。
そんな、番人向けコンテンツであるテレビ番組をネットでそのまま流したところで、テレビの視聴率ほどの再生数を集める事はできるのでしょうか。
実際にTVerの視聴ランキングを見ても、ほとんどドラマばかりで一般的なテレビ番組はほとんど見られていないことが分かります。
このように、テレビでは番人向けコンテンツ、ネットではニッチコンテンツという住み分けが出来上がっていています。
言わば、テレビのコンテンツはみんなのためのもの、YouTubeのコンテンツは自分のためのものであると言えます。
テレビは無くならないが、これ以上成長もしない
ではここで、「テレビは今後無くなっちゃうの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、テレビが無くなることはないと思います。
その理由は、ラジオが今も無くなっていないからです。
ラジオは戦前から放送されていて、テレビが普及するまでは1家に1台ラジオがあるのが当たり前で、全国民がラジオを聞いていると言っても過言ではないほどメジャーでした。
ところが、2020年の現代はどうでしょうか。
現代もラジオ放送を聞いている人はいるにはいますが、テレビやYouTubeを見ている人の数に比べたら圧倒的に少なくてマイナーなメディアだと思います。
それでも、ラジオは停波されずに今でも放送され続けています。
今後テレビを見る人の数が少しずつ減っていて、いつかメジャーなメディアでは無くなる日がやってきます。
そして、20xx年に「テレビは全く見ない」という人が多数派になったとしても、おそらくラジオのようにテレビは無くならずに放送を続けています。
ただし、その頃のテレビは再放送が増えたり、BSのように通販番組が増えている可能性があります。
このように、テレビが無くなることはありませんが、時代の流れから言ってもテレビの全盛期は過ぎてしまってこれ以上伸びないので、今後はネットメディアであるYouTube、Netflix、Amazon Prime Video、Disney+などが成長していくのではないでしょうか。
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最後に
今回は、『TVerが同時配信(サイマル)に対応してもYouTubeに勝てない3の理由!』についてご紹介しました。
このように「TVer」が同時配信(サイマル)に対応しても、YouTubeには勝てないと言えます。
ネットメディアの世界では、ニッチな動画の分野ではYouTubeが圧倒的に強いですし、ドラマの分野では、予算のあるNetflixやAmazon、Disneyなどにテレビは勝てないと思います。
テレビの唯一の強みはニュースや報道にあると思いますが、ニュースだけでスポンサーを集められるかどうかは疑問なので、今後テレビ局はどうするのか見ものです。
果たして、テレビ局やTVerは今後どうなっていくのか、YouTubeやNetflixなどはどこまで成長していくのか注目ですね。